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Only you……
第1章 麻都 1

 ガチャガチャ、キィー、ガコン――。

鍵を開け、郵便物を手に取る。ダイレクトメールばかりだった。こいつらはゴミ箱に直行だな。そんなことを思いながら、居間の戸を開ける。

「あ……」

明が俺の顔を見て、赤面している。なぜだ――?

「ただいま」

とりあえず笑顔で挨拶しとく。

「ん……お、かえり」

そっぽを向いてしまった。失敗か?

「腹減った? 待ってくれればすぐ作るから」

「いや」

「待てないなら、出前でも――」

「ちがくて」

突然こちらに向き直り、思い切り睨まれた。俺は思わず一歩引いた。明がまた顔を赤らめる。

「あ、のさ。勝手かと思ったんだけど、飯……作った、んだ」

俺はその言葉を、すぐには理解できなかった。言葉を何度も頭で繰り返し、ようやく理解した時、思わず俺は明を抱きしめてしまった。

「マジかっ!? やった!!」

「ひいっ!」

とたんに突き飛ばされる。抱きしめた明の体は予想以上に細かった。――いや、細いと言うよりは病的なほどに痩せていた。

明はガクガクと振るえている。昨夜の恐怖を、俺が思い出させてしまった。

「……ごめん」

「……」



明が作ってくれた夕食。本当は笑顔で食べたかった。ぶち壊したのは俺。目の前には無言のままの明。罪悪感が胸を苦しめ続けた。

その夜は、昨日のように、明が俺の元へ来ることは無かった。独りであの広いベッドで泣いているのかと思うと、俺は自分の軽率な行動を憎んだ。 
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