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Only you……
第6章 明 3
ガチャ――。
ドアの開く音がして、オレは振り返った。そこには疲れた顔の麻都がいた。
「あ」
「あぁ!!」
麻都はオレを見つけると一目散にかけより、頭をペシペシ叩いた。
「痛いって……」
うんざりしながら見上げれば、そこには先ほどとは違う満面の笑みがあった。
「明じゃんっ!!」
腕を引っ張られ無理やり立ち上がらされると、麻都はオレを抱きすくめた。その力に、オレの背中はパキッっと鳴った。
「ここは仕事場ですので、そういうことは他でやってください」
りんさんの鋭い言葉が飛んでくると、麻都は「……ぅ」とうめいてオレを放した。
オレは腰をさすりながらドアの方へと移動した。
「それじゃ、オレは帰る」
「え? 帰っちゃうの?」
麻都は寂しそうに尋ねてきたが、オレはこくんと頷いた。
「りんさん、今日はありがとう! オレ、頑張ってみるよ」
ひらひらと手を振りながらオレはその場を後にした。
ドアの向こうからは、麻都が「りん! 俺の明に何をしたんだよ!」という叫び声が聞こえてきた。
オレは思った。りんさんと話していて、思った。きっとりんさんは――。
――きっとりんさんは、麻都のことが好きだったんだ……。
あの切なそうに遠くを見つめる瞳は確かにそれを物語っていた。それなのに、りんさんは親身にオレへアドバイスしてくれた。
オレの中から何かが湧き上がってきた。
卑屈になっていた自分から卒業しよう。
小学校も中学校もまともに卒業してないけど、今回は頑張って卒業しよう。
そう誓った。
まずはりんさんの言っていた何かを探そうと、街へと繰り出す。趣味やなんかでもいいだろうと言っていたから、料理の本でも買おうかと思っていた。しかし、オレの考えはすぐに変更されることになる。
とある一軒のお店の前で。