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僕たちはこの方法しか知らない(BL短編集)
第1章 Like A Cat

まるで挿入を遮るようなタイミングでヤツは声を上げた。俺は焦らさせた気分で少しむっとした。

「オレ……好きになっちゃったと思うんだ」

思わぬタイミングの思わぬ告白に、俺は目を見開いた。衝撃的だし、刺激が強すぎる。

「なんで俺より先に言うかな」

「え、ご、ごめん……」

俺は照れ隠しに頭を掻いた。憎まれ口を叩いてはみたが、本当は嬉しいに決まってる。

「俺も好きだ。お前が恋人の意味を知る前からな」

「えぅ!」

言いながら挿入を始めるとヤツは変な声を上げた。心と体への同時攻撃は刺激が強かったんだろうな。恥ずかしそうに口元を押さえて顔を染めているヤツを見下ろすのは、今までで一番心地よかった。

初めて抱いたときよりもゆっくり、丁寧に挿入し、中でもヤツの体が落ち着くまで待った。それからゆっくりと腰を動かす。ヤツは始め口元を抑えた状態のまま揺さぶられていたが、そのうち抑えられなくなったのかシーツにつかまり切ない声を上げた。

「好きだ」

俺は上体を倒しヤツを抱きしめて耳元でささやいた。ヤツは必死に俺にしがみついている。絶え間なく喘ぎ声は漏れていたが、俺がささやいた瞬間にはアナルがキュンと締まったのを感じた。俺の言葉に、ヤツが感じている。それだけでも幸せを覚えた。

それからゆっくりと互いに高みに昇っていき、ついには果てた。俺はヤツが痛みなしにイクところを初めて見た。本人も少し驚いているようだったが、嬉しそうに照れて笑っていた。そしていつもどおり、俺の腕の中に収まり、胸元に額をすりつけてくる。くすぐったくてかわいらしい仕草。

「お前、イケたな」

「うん……なんか、恥ずかしいな」

そんな会話ができるようになるとは思ってもいなかった。何がきっかけでヤツの主従の呪縛が解き放たれたのか。俺には知る由もなかった。

久しぶりにゆっくりと眠れそうなまどろみの中、ヤツは小さな声で独り言のようにつぶやいた。

「……猫ってね、自分の死を悟ると飼い主の元を去るんだって」

何も知らない割りにそんなことは知ってるんだなと半分眠ったような状態で聞いていた。そこにどんな意味があるかなんて考える余裕はなかった。



翌日は久しぶりに無言電話がなかった。不思議には思ったが、特にだからどうということもない。不愉快な現象が減ってよかったとしか思わなかった。正直、俺は浮かれていた。
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