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僕たちはこの方法しか知らない(BL短編集)
第1章 Like A Cat

「じゃあ、行ってくるな」

「いってらっしゃい」

ヤツの頬にキスをすると、嬉しそうな笑顔が返ってきた。ヤツは珍しくきちんと服を着て、いつもと同じくソファの上で体育座りをしている。

俺は久しぶりに気分良く出勤した。



「ただいま」

玄関を開けるといつもは煌々と明かりが点いているのに、今日は真っ暗だった。ヤツは寝ているのかと思いリビングの電気を点け、ついでに習慣になっているテレビも点ける。今はニュースの時間帯だ。とりあえず最低限の常識を仕入れるためにかかさず見ていた。

俺は寝室の扉をそっと開けた。晴れて恋人になれたわけだから、早く顔が見たかった。

ところがそこに、ヤツの姿はなかった。綺麗にメイキングされたままのベッドがひっそりとあるだけ。じゃあトイレかと思うがいない。バスルームにも、キッチンにもいない。

――どこへ、行った……?

冷や汗が頬を伝う。玄関へ行くとそこにヤツの靴はなかった。

「う、嘘だろ……」

意味がわからない。昨日あんなに気持ちを確かめ合ったのに、今日になっていなくなるなんて。俺といるのがイヤになって逃げ出した? そんなわけはない。じゃあなぜ。

終わらない自問自答。答えなんて自分の中にあるはずがないのに、問いかけずにはいられなかった。
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