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僕たちはこの方法しか知らない(BL短編集)
第2章 最後のチャンス
「あははは――、もうほんっと君って可愛いよね」
「……どーいう意味」
「卒アル見てごらんよ」
和幸は不満げに啓斗を見てから、胸に抱えたままのアルバムを開く。
「体育祭とか、なつかしー」
「いや、そこじゃないから」
「……わかってるよ!」
放っておくと本当に話が進まない。啓斗はまたも苦笑しながら突っ込みをいれる。和幸のすねたような表情に頬が緩む。
「あ」
「充電切れも番号覚えてないのも想定内。あれだけ写真とってたら後からメールラッシュでしょ。ただ、アドが初期のままってのは流石に驚いたかな」
アルバムの最終ページには、啓斗のアドレスと番号が書かれていた。それと共に書かれたメッセージに和幸の顔は上気する。
『お前、俺のこと好きだろ』
啓斗は和幸の表情の変化を口元に手の甲を押し当てて眺めた。そうしないと笑い声が廊下に響いてしまいそうだったからだ。
「違った?」
啓斗が一歩、和幸に近づく。アルバムを凝視したままの和幸は少しずつ縮まる距離に気がつかない。
「ねえ、俺の勘違い?」
啓斗の口調が誰にでも優しい委員長ではなくなる。
和幸は困惑して潤んだ双眸のまま啓斗を見上げた。まるで、どうしたらいいの? と助けを求めるみたいに。
「口で答えろよ。違うなら違うでいい。俺がバカだったってだけの話だ」
「……がく、い」
「聞こえない」
「違くない……」
和幸は俯き小さく震えていた。これがどういう意味で、これからどうなるのかわからなくて怯えているのだろう。啓斗は抱きしめたくなる気持ちを一旦押し殺して、もう一言紡ぐ。
「なにが違わないって?」
意地悪く、自信たっぷりに。最初からわかりきった答えをあえてその口から言わせようとする。そもそも啓斗はそれを待っていたから卒業にまでなってしまったのだ。初めからこうすればよかったと思った。
「お、俺……俺が、その、えと」
意地悪したい。でも甘やかしたい。天使と悪魔のように、啓斗の気持ちの天秤は揺れる。飴とムチほどはまだ上手く使いこなせない。所詮はまだ高校生。その辺は理解しているつもりだ。
俯いている和幸の髪をサラリと撫でる。
驚いたように顔を上げる和幸に啓斗の形のいい唇は優しく弧を描く。
「言えよ。悪いようにはしないから」
「……どーいう意味」
「卒アル見てごらんよ」
和幸は不満げに啓斗を見てから、胸に抱えたままのアルバムを開く。
「体育祭とか、なつかしー」
「いや、そこじゃないから」
「……わかってるよ!」
放っておくと本当に話が進まない。啓斗はまたも苦笑しながら突っ込みをいれる。和幸のすねたような表情に頬が緩む。
「あ」
「充電切れも番号覚えてないのも想定内。あれだけ写真とってたら後からメールラッシュでしょ。ただ、アドが初期のままってのは流石に驚いたかな」
アルバムの最終ページには、啓斗のアドレスと番号が書かれていた。それと共に書かれたメッセージに和幸の顔は上気する。
『お前、俺のこと好きだろ』
啓斗は和幸の表情の変化を口元に手の甲を押し当てて眺めた。そうしないと笑い声が廊下に響いてしまいそうだったからだ。
「違った?」
啓斗が一歩、和幸に近づく。アルバムを凝視したままの和幸は少しずつ縮まる距離に気がつかない。
「ねえ、俺の勘違い?」
啓斗の口調が誰にでも優しい委員長ではなくなる。
和幸は困惑して潤んだ双眸のまま啓斗を見上げた。まるで、どうしたらいいの? と助けを求めるみたいに。
「口で答えろよ。違うなら違うでいい。俺がバカだったってだけの話だ」
「……がく、い」
「聞こえない」
「違くない……」
和幸は俯き小さく震えていた。これがどういう意味で、これからどうなるのかわからなくて怯えているのだろう。啓斗は抱きしめたくなる気持ちを一旦押し殺して、もう一言紡ぐ。
「なにが違わないって?」
意地悪く、自信たっぷりに。最初からわかりきった答えをあえてその口から言わせようとする。そもそも啓斗はそれを待っていたから卒業にまでなってしまったのだ。初めからこうすればよかったと思った。
「お、俺……俺が、その、えと」
意地悪したい。でも甘やかしたい。天使と悪魔のように、啓斗の気持ちの天秤は揺れる。飴とムチほどはまだ上手く使いこなせない。所詮はまだ高校生。その辺は理解しているつもりだ。
俯いている和幸の髪をサラリと撫でる。
驚いたように顔を上げる和幸に啓斗の形のいい唇は優しく弧を描く。
「言えよ。悪いようにはしないから」