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ラブ☆ファイト!!
第1章 いち
あたしの通う聖陵学園は、お嬢様とお坊ちゃましかいない。
「ごきげんよう?」
「ごきげんようー」
全く、何がごきげんようなんだか。
鬱陶しい挨拶だ!
あたし的には気軽に「よう」とか、「ちっす」とかの方が、馴染むんだよね。
もちろんそんなあたしには、この学園で友達と呼べる人は、いない。
それでも頑張って卒業まで通おうと思ったのは、全て母さんの為だ。
中学生時代、散々悪い事をして、補導されて警察のお世話になった。
そのたびに、警察の人に何度も頭を下げて、あたしを迎えに来てくれたのは、母さんだけだった。
母さんは、あんなろくでもない父親に、毎日、酒と暴力を振るわれながら、日々の生活に耐えて、その上、あたしまで非行に走って、とんでもない苦労をさせてしまった気がするのだ。
でもさ、少しくらい息抜きしてもいいよね?
キーンコーンカーンコーン。
最終授業のベルと共に、あたしは足早に学園を後にした。
留学する前、ずっと通いつめた湘南へ、自然と走り出す。
廃ビル、砂浜、族の溜まり場、繁華街をしらみ潰しに、渡り歩く。
「…いない!2年も経てば、すっかり変わってしまったんだな。」
族は解散し、荒れていた街は、あたしがいた頃よりも一掃されて綺麗に整備されていた。
一人、途方にくれ、ぽつんと由比ヶ浜の海岸線に一人、佇む。
ザザーン、ザザーンと打ち返す波の音は当時と変わらないのに……
青春を謳歌した影は、無惨にも薄くなっていて、胸が締め付けられた。
そうだ、あたしは千秋に、会いたかった。
例え、このまま類と結婚する事になっても……
あんな別れ方をして、さようならした事を、後悔しているのかもしれない。
とにかく、
もう一度、会いたかったんだ。
波が、ザザーン、ザザーンと、あたしの想い出を打ち消していった。
‥