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ラブ☆ファイト!!
第1章 いち
サーっと自分の血の気が引いていくのが分かる。
恐る恐る類の顔を見上げると、眉間にシワを寄せている。
「…………」
やっぱり、類は無言だ。
でも怒った顔もまた一段と麗しいのが、とても羨ましい……って違うだろ、あたし、今、類のこと、呼び捨てにしてしまった!ような気がする。
あの新しい父親でさえ、類のことを、"さま"付けで呼んでいるのに……あたしのばか。
「た、ただいま帰りました、類さま!帰りにお友だちのお家に寄って盛り上がってしまいまして、遅くなりました!」
「ふーん?」
へ、へ?
えっと、いま、ふーんって言ったこの人?
はじめて会話らしい会話を交わしたと、思っていたら、一歩、一歩、近づいて来て、気がつけば、壁にドンと背中に当たり、類の顔が近づいて来た。
その行動に、びっくりし過ぎて、横を向いたら、強制的に顎を上に向けられ、彼は右手一本であたしの両手を頭上に縫い纏め、彼より30cm以上小柄な自分は、簡単に拘束されてしまった。
その素早い彼の早業に、唖然とする。
こ、このあたしが一瞬で身動き取れなくなるなんて、あり得なかった。
「あんた、嘘つくと、変な顔になる。それに、」
「……は?」
「朝、オレの帰りを待っているとか、言ってたような気がする。」
「……あっ」
そういえば、そんなこと言ったかも……?
ていうか、こんなにたくさんあたしに話しかけるのは、はじめてじゃないですか?
しかも、こんなヤバい体制でさー?
どうすればいいんだー!?
「…え…な、なに?」
突然類は、あたしの髪の中に顔を埋めて来たのだ。
「嘘つき。」
「…ちょっと、やだ。」
信じられなくて、恥ずかしくて身をよじっても、逃げられない。
「…これ、潮の匂い?」
類の息が耳にかかってくすぐったい。
「…っ……やぁ……!」
「あんたの体から、海の匂いがする。」
「「あっ!?」」
今日、全ての行動、思惑を、的確に
言い当てられたような気がして、
ドキン、心臓が飛び出しそうに、なった。
…