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私達が人間を辞めた日【外伝】 寿~孤独な支配者~
第4章 亀裂

愛華と校門前等で待ち合わせたら面倒な注目を浴びてしまうので、学校から少し離れた場所のベンチに座って待つ。
その間にも心臓は情けないくらい激しく鼓動を打ち、不快な汗が背筋を伝う。

「ごめんっ、お待たせ」
「...あっ...うん、そんなに待って無いから。俺こそ急に呼び出してごめん」

不意に後ろから愛華に呼び掛けられた俺は、必死に平静を装いながらも更に昂る鼓動に目眩すらしてきた。
愛華は俺の隣に腰掛けて、俺が話すのを待っている様子だ。
思えばちゃんとした言葉を考えていない事に今更気付き、数秒間も黙ってしまった後、意を決してチケットを取り出す。
俺には気のきいた会話等できない...素直に意思を伝えるんだ。

「あの、これ...愛華が観たいって言ってた映画のチケット...ちょうど手に入ったんだ。よかったら今から行かない?」

この期に及んでちょうど手に入ったは我ながら情けない...しかし愛華と観たいから用意したという台詞は、俺にはハードルが高過ぎる。
愛華はそのチケットを見た一瞬だけ、目の色がいつもよりも輝いた気がしたが....直ぐに暗い表情へと曇っていく。

「ごめんなさい...今日は用事があるの...本当にごめんね?せっかく用意してくれたのに...もしよかったら、また誘ってくれる?」
「...う、うん。まだ期限たくさんあるから、また誘うよ」

俺はこんな事ですら壮大なショックを感じてしまう...
結局...そのまま愛華が帰っても...俺はしばらく立ち上る事ができなかった。
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