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私達が人間を辞めた日【外伝】 寿~孤独な支配者~
第4章 亀裂
すがる...頼る...守られる...それが現実...俺という弱い人間の限界。
母との思い出にすがり...誰かに助けて貰おうと頼り...愛華に守られる...
嫌だ...そんな弱い自分は...自分の意思も伝えられず、一人では何もできず、ただ待つしかできない...そんな自分が嫌いだ。
一歩...いや、半歩だけでも踏み出せたら、俺は変われるのだろうか?
相変わらず麗奈の道具にされ、学校で孤立し、父親の顔すら見ていない日々を繰り返した俺は、一晩中の決意を込めて二枚の紙を鞄に忍ばせた。
それは何気ない会話の途中で愛華が観たいと言っていた映画のチケットだ。
今日の放課後、俺は愛華を初めて誘おうと思っている。
少しだけ勇気を振り絞って...自分の気持ちに素直になろう。俺が愛華を好きという気持ちは本物だ。
今日...最初の一歩を踏み出す...ここから始めるんだ。
まだ家を出てすらいないのに、俺の緊張は既に限界近くまで到達していた。
今日は麻耶が休みの日なので簡単な朝食を済ませ、帰りは遅くなると和雄に留守電を残してから家を出る。
どのみち和雄は今日も帰らないのだろうが、連絡していない場合は使用人の代理が呼ばれる。夕食が要らないのに代理人にわざわざ来て貰うのは少々心苦しいのだ。
運良く校門で愛華と遭遇できたので、放課後話があるという事を伝える。極度の緊張で今日だけはクラスでの立場も、大きな陰口も気にならずに済んだ。