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私達が人間を辞めた日【外伝】 寿~孤独な支配者~
第4章 亀裂
声を上げそうになるのを必死に堪える。
愛華の用事は...和雄と会う事なのだろうか...しかし...目的はなんだ?
「あの...優真君は...」
「優真なら今日は予定があるらしい」
和雄は愛華の問いに答えながらスーツのネクタイを外し、ベッドに腰掛ける。
「でも...予定がキャンセルになったりしたら...」
「どちらにしろ優真が俺の部屋に来る事なんて無いぞ。家でも顔を合わせないからな」
予定がキャンセル...愛華は俺の予定というのが映画の件だと悟ったようだ。
不穏な光景に...俺の体は何故か動こうとはしない...
愛華は何かを決意したように...俺が見た事も無い程...目付きをはっきりとさせて和雄を見る。
「優真君の事もう少し...ちゃんと考えてあげた方がいいんじゃないですか?」
「考えてるさ...金も渡しているし使用人を雇って食事も用意させている」
「そんな事で親の責任を果たしたつもりなんですか。優真君の気持ちをもっと...」
「今日は煩いな...自分の立場を忘れたのか...お前の父の会社が倒産しないのは誰のおかげだと思っているんだ?お前の父も了承済みだろう...随分と躾たつもりだったが...まだ足りないようだな」
和雄の捲し立てに...愛華はぐっと俯いた。