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私達が人間を辞めた日【外伝】 寿~孤独な支配者~
第1章 プロローグ~茜色の約束~
暗転...
集中治療室のベッドに横たわり、弱々しい呼吸を繰り返す母親...その呼吸は少しずつ...浅くなっていく。
父親と少年が握る手を穏やかに握り返し、重そうな瞼の隙間から優しい瞳を覗かせる。
「手は尽くしましたが...難しい病気ですので...もう...」
苦虫を噛んだような顔で医者が言う...
少年はよろめきながら立ち上がり...涙を溢れさせ、医者の服を掴んだ 。
「嘘だ...嘘だ!!!お母さんが...こんなに優しいお母さんがっ!!死んじゃうはず無いんだ!!!だって...神様が...うっ...見てくれて...」
「...優真...こっちに来なさい...お母さんと...お話するんだ...」
少年が医者に叫んだ言葉が嗚咽に変わる頃...父親は促し、少年は泣きながら再び母親の手を握る。
徐々に冷たくなっていくような母親の手を温めようと...強く...優しく...
「お母さん...大丈夫だよ...もう直ぐ神様が...助けに来てくれるからね?」
母親は少年の慰めにうっすらと笑みを浮かべ、ゆっくりと口を開いた。