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私達が人間を辞めた日【外伝】 寿~孤独な支配者~
第1章 プロローグ~茜色の約束~
「優真...お母さん...もう...駄目...みたい...」
その声は普段の透き通るような声とは違い...ノイズのような掠れた声だった。
「そんな事無いよ!!だってお母さん...優しいもん...だから...えぐっ...幸せに...」
少年は母親の手を更に強く握る。一度離してしまえば...もう二度と...その手は持ち上げられないような気がしたから...
「幸せだよ...お母さんはね?死んじゃっても...幸せ...」
「なんで...うっ...死んじゃったら...幸せなんかじゃ...」
「優真の...お母さんに...なれた...から...それだけで...幸せなんだよ...?」
少年は何か言いかけるが、激しい嗚咽に押し返され...ただ母親の最後の言葉を聞く...
「お母さんは...優真が...優しくして...くれたから...幸せだった...でも...優真を...幸せに...してあげられ...なくて...ごめん...ね...?」
目を開ける事すら苦しそうな母親...少年は必死に母親の手に自分の体温を送る。
「誰より...も...優しい...今の...ままの...優真で...いてね...?お母さん...天国で...神様と...一緒に...見てる...から...約束...忘れないで...ね...」
その言葉を最後に...母親の瞳も...口も...指も...二度と動く事はなかった。