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私達が人間を辞めた日【外伝】 寿~孤独な支配者~
第5章 一時の温もり
手を繋いだままの俺達は、この前の公園のベンチに腰掛けた。
それから緩やかな静寂が流れ...愛華が口を開く。
「今日はありがとう。優真君と一緒に観れてよかった。優真君は本当に優しいね...私の為にわざわざチケット用意してくれて...」
「いや...そんな事は...俺も...その、愛華と観れて...よかった」
愛華は俺の言葉に微笑み返す。
「優真君のお母さんとの約束...前話してくれたよね」
「...うん...愛華にしか話してないけど」
「私優真君のお母さんの言葉...本当に素敵だと思う。優真君は絶対幸せになれるよ...だから...あんまり一人で思い詰めないでね?」
昨日の和雄との会話が関係しているのだろう...俺が家族と関わる事無く過ごしている事についてだ。
でも...なんでそんなに...自分を辱しめる男の息子を...心配できるの?
愛華の方が...辛い思いをしているのに...その服を脱げば...残酷な痣にまみれているのに...
「愛華は...」
俺の出した声は震えていた。気付けば涙が溢れ、情けなく俯いてしまう。
「愛華は...どうして俺に...こんな俺に...優しくしてくれるの...?」
俺は本当に惨めだ...幼い頃この公園にいた俺も...母さんの前で今みたいに泣いていたんだ。