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私達が人間を辞めた日【外伝】 寿~孤独な支配者~
第5章 一時の温もり
今まで恋愛映画という物は好きになれなかった。
どれだけ熱演しようと、盛大なBGMで演出しようと、俺には薄っぺらい内容に見える。
当然だ...そこに本物の愛は無いのだから...
ハッピーエンドになる事を知っているんだから、途中でいくら挫折しようと、仲違いしようと...最後に幸せになれるんだから...俺には全く縁の無い物だと...思い知らされるんだから...
隣で愛華のすすり泣く音が聞こえる。俺も少しだけ泣いていた。
愛華も同じ気持ちなの?その都合の良い愛が羨ましいから...妬ましいから泣いてるの?
俺の右手に愛華の左手が触れ...その手の温度が伝わる。偽りじゃないのはこの温度だけだ。
俺達はどちらからでもなく、映画が終わるまで手を握り続けた。
「あんな素敵な恋...できたら幸せだよね...」
映画館を出た愛華のしみじみとした言葉に頷く。
「ねえ...あの公園に行こうよ」
「え?愛華はもう帰らなくちゃいけないんじゃないの?俺の家には近いけど、愛華の家と逆方向じゃ...」
「私は大丈夫だよ?だから...行こ?」
普段の愛華から考えられない程積極的だ。
愛華に手を引かれる...愛華は周囲の目なんてまるで気にしない様子で歩き続けた。