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私達が人間を辞めた日【外伝】 寿~孤独な支配者~
第5章 一時の温もり
「でも...俺は...俺は...」
言おうとした言葉も嗚咽に押し返される。
伝えなきゃいけないのに...俺が愛華を見捨てた事を...愛華に関わる資格が無い事を...
不意に...暖かい感覚に包まれる。愛華は俺を抱き締めていた。
「優真君が何を言おうとしているのか解らなくても...優真君は私の為に泣いてくれてるって事は私にも解るよ...だって優真君は...優しい人だから...」
違うんだ...これは自分の為の涙だ...
俺が愛華に嫌われるのが怖いから...涙が俺の意思を伝えるのを邪魔しているだけ。
それでも...俺は愛華の背中に腕を回す。
せめて言葉以外でも伝えよう...愛華を守れなかった謝罪も...どれだけ俺が愛華を愛しているのかという...精一杯の愛情も...
「ありがとう。今日は...優真君と過ごせてよかった...優真君がいてくれたから...私は今日まで...頑張ってこれたんだね」
今日まで...愛華はそう言った。
当日になって急に映画に誘うという事も、強引に公園に誘うという事も、今俺を抱き締めるという事も...全て愛華らしくない行動だったという事に...愛華と別れた後も気付けなかったんだ...
そして...気丈に保ち続けていた愛華の心が...もう限界だったという事も...
....愛華は...この日の夜....自殺した...