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私達が人間を辞めた日【外伝】 寿~孤独な支配者~
第6章 針
泣いて...後悔して...泣いて...自分を嫌いになって...泣いて...
もう何時間も自室のベッドで情けない嗚咽を洩らし続けているのだろうか...
俺が愛華を助けられたら...
父さんを説得できたら...
愛華の心境に気付く事ができたら...
俺に勇気があれば....
俺が弱くなければ...
...愛華は...死ななかった....
俺は最後の言葉を告げに来た愛華の気持ちを理解する事ができずに、本当に救って欲しいはずの愛華に救って貰っていたんだ。
ズキッ...と頬が痛む。心の痛みに比べたら些細な物だが...
俺は愛華の葬儀に出る事を和雄に止められてしまい、珍しく食い下がると頬を強く殴られた。
臆病な俺はそれだけで何も言えなくなってしまう。
和雄が俺を葬儀に行かせない理由はおおよそ理解できる...
おそらく和雄は愛華との関係を揉み消している最中なのだろう。そんな中で肉親の俺が少しでも愛華に関わるのを避けたのだ。
それでも俺は言わなければならなかった。
お前が愛華にしていた事は知っている...家族に謝罪して罪を償えと...どんなに無駄であっても言わなければならなかったんだ。
しかし、自分の罪を棚に上げて...?そんな思考が過った俺は...結局何も言えなかった。
そうだ...どちらにせよ俺は...愛華の亡骸に...どんな顔で会って...どんな言葉をかければ良いのか...わからない...