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私達が人間を辞めた日【外伝】 寿~孤独な支配者~
第7章 決別
かつて麗奈という人間だった肉の塊から離れ、懐にしまっていた写真を見詰める。
母に寄り添う幼い俺と...俺の頭を撫でながら穏やかな笑みを浮かべる母の姿...
久しぶりに見た母の顔が...俺に何か問い掛けた気がしたが、今の俺には不協和音にしか聞こえなかった。
「うるさい...」
その写真を裏返しても耳障りなノイズは消えてはくれない...
「もう...俺に話しかけないでくれよ...」
サイドテーブルに置かれた灰皿に写真を投げ入れ、ライターの火を着ける...
「さよなら...母さん...」
火を写真に近付けると、手が震えた...
込み上げてきた感情の正体を知ろうとはせずに...写真に火を着ける...
メラメラと燃えていく写真の中の母の顔が歪んでいく...
いつか...遠い昔に俺と母を照らした夕焼けのように...炎が茜色に揺れる。
写真が炭に成り果てた頃...俺は無意識に手を伸ばしていた。
その手を握り締めて部屋を出る。
そうだ...俺はもう奪う側の人間なんだ。
これからは...何もかも...奪ってやる...
車に乗り込み、ふとバックミラーを除くと...醜悪な笑みを浮かべる俺の姿...
この日...俺は過去のしがらみと...決別した...