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私達が人間を辞めた日【外伝】 寿~孤独な支配者~
第2章 秘めた想い
父の和雄の行った行為は俺も把握してはいないが、汚い手口で権力者にのしあがった事やその権力を利用して様々な悪行を行っている...というのが世間の認識だ。
昔は週刊誌等で騒がれていたが、今ではピタリと止まっている事からも和雄が世間を権力で黙らせたのだと多くの人間が予想している。
実際、和雄はほとんど家に帰らないし、数ヶ月もまともに会話をしていないが、なんとなく...世間の認識は真実だろうと俺ですら思っているのだ。
なので和雄と違い、周囲を黙らせる事ができない俺がそんなくだらないしわ寄せを受けている。
抵抗しない俺を見たクラスの連中は益々調子に乗り、嫌がらせをエスカレートさせていった。
和雄は...昔はそんな人間じゃなかった...
誰よりも誠実で...母のように優しく...幼い俺と良く遊んでくれるような...理想に近い父親だったと思う。
そんな和雄が変わってしまったきっかけは、母の死だ...
人に優しくというのが口癖の母が、理不尽な難病に命を奪われてから...和雄は狂ったように仕事に打ち込み...生き急ぐように出世を求め...これ以上無い程の権力を手に入れてからも...何かを探すように...尽きる事のない欲望に突き動かされているように感じた。
もう...父の瞳には...俺すら映っていないように思える...