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トラワレテ…
第5章 欲情
「本人の希望でさ…イタリアの海に散骨してくれって言われてたから、特にお墓参りする様な所ないんだけどね…。ここに来ると…すぐそばにいるような気がするんだ…。」


柵に寄りかかりながら淋しそうに話す横顔に胸がキュンとした…。


「あの…アタシなんかが一緒に居ていいんですか?」


「ん?あぁ、確かにココに誰か連れてきたのはユリちゃんが初めてだけど…。
昨日ユリちゃんがノンナのライト見てた姿がね…なんかノンナが連れて来いって呼んでる気がしてね…。ごめんね。こんな所に連れてこられても困るよね。」


「ちがっ!そ、そんな事ないです!馨さんの大切な場所に連れてきて貰って…お祖母様に会わせていただいて…あの…すごく嬉しいです!!」


誤解させたくなくて、必死になった自分が恥ずかしくて俯く…。




不意に後ろからギュっと抱きしめられた。

突然の事でびっくりして何も言えずにいると、


「ありがとう…。少しだけ…こうしてていい?」


淋しそうな切ない声に胸が熱くなり、ユリはただただ頷く事しかできず、抱きしめられたその腕にそっと自分の手を重ねた…。


どうしていいかわからず、大きく響く鼓動を感じながら、水平線に沈みゆく美しい夕日を眺めていた…。




どの位そうしていただろう。

ふいに抱きしめられた腕が緩むと、くるりと体の向きを変えられた。



「ユリちゃん…。泣いてるの?」


言われてはじめて、自分の頬を伝う涙に気がついた。


「…え?やだ…。」


慌てて拭おうとした手首を優しく掴まれ、熱いまっすぐな視線に捕らえられて、目が離せなくなる。


「泣かないで…。」


そう言って、まるで涙を吸い取るように目元に口づけられた…。


そして、大きな暖かい手に頬を包まれ…


確かめるように唇をなぞる親指。


優しく触れるだけの甘くとろけるキスが降ってきた…。


「…んっ…。」




離れていく彼の温もりを淋しく感じ、そっと目を開ける。


「そのカワイイ顔、反則…///」



馨さんは少し照れたようにまた優しく抱き締めてくれた。











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