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例えば、こんな...
第8章 女子高生と先生と #1
密やかに聞こえてくる人の声。桐生先生の低く穏やかな声と落ち着いた男子の声。なにを言っているかまでは聞き取れない。その当たりの柔らかな二人の声のやり取りは締め付けられる様に痛む頭に意外にも心地好くて、何時しか眠りに落ちていた……


カタンとドアの閉まる音。
ゆるゆると意識が浮上する。

……今、何時だ?

薄暗い室内に眼鏡を掛けて腕時計を確認した。時刻は間もなく六時。

三十分位寝ていたか……

まだスッキリしないが、頭痛はかなり楽になっていた。
ゆっくり上体を起こす。白衣を掴んでベッドから降りた。カーテンを開けた先に桐生先生の姿はない。

そう言えば居なくなるような事言ってたな……
さっきの音、か

腕を上げて身体を伸ばす。
部屋の暗さから、完全に一人だと思っていた。
「ぁ、の……斎藤せんせ?」
ついさっきまで寝ていたベッドの方から声を掛けられて、弾かれる様に振り向いた。
二台並んだ手前のベッド。カーテンの隙間から顔を出していたのは
「河合?」
思いもよらない偶然にトンと心音が鼓膜に響く。
「スミマセン、桐生先生は?」
上気した顔に潤んだ瞳。熱があるのは一目瞭然だった。
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