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例えば、こんな...
第8章 女子高生と先生と #1
ドアを開け、廊下の眩しさに室内が暗くなっていたことに気が付いた。時計はとっくに六時を過ぎている。
誰もいないのを良いことに、走って教員室に戻った。実験室も準備室もすでに暗く、部員達は言った通り帰ったようだった。念のため中に入って火気類の確認をする。

河合はまだ高三で、おれはもう二十七。十年の差もさることながら、教師と生徒である以上、動く事は許されない。
分かってる。でも、どうしようもなく、惹かれてる。
思いがけない偶然で近付いた距離。自覚したばかりの気持ちは増す一方で、そう簡単に消せそうもない。
女子高生なんてガキに過ぎない、そう思っていたのに……

戸締まりをして教員室を後にした。途中自動販売機に寄って保健室へ戻る。
桐生先生の札は未だ不在。中に電気が灯っている気配はなかった。
戻ってきた桐生先生が家まで送って帰ったか?

深呼吸をしてドアに手を伸ばした。軽くノックして、そっと開く。
「河合」
「……はい」
声が返ってきた事にじわりと胸が熱くなる。壁のスイッチの場所を確め
「暗いから、電気点けるよ?」
そう声を掛けた。
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