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例えば、こんな...
第8章 女子高生と先生と #1
「あぁ」
視線の先で声がする。揺れたカーテンの間から紺の靴下を履いた足が覗いた。カーテンがレールを滑る音。河合を横抱きにした男が出てくる。
「そんな感じだな。このまま病院に連れていく。明日は休ませるから」
河合は身体を兄に預け、くったりとしていた。その目が少し開く。
「そぉちゃん、さいとせんせ……さっき、の……」
気怠そうに兄を見上げ、次いで俺に向かってふわりと微笑んだ。
「彼?」
河合が頷くのを確認して、こちらに顔を向ける。
「斎藤先生でいらっしゃいますか?」
真っ直ぐに俺を見る眼差し。射抜かれたように思うのは俺に邪な気持ちがあるからか。
「はい」
「河合の兄です。妹がお世話になったようで……水もありがとうございました」
頭を下げられて会釈を返した。
「いえ、お大事になさってください」
「ありがとうございます」
もう一度頭を下げ、近くの桐生先生へ向き直る。
「誠司もありがとう。また連絡する」
「いえ。河合さん、お大事にね」
柔らかな声に、河合がゆっくり目蓋を上げた。
「ありがとう、ございました」
小さく言って、その眼差しを俺へと流す。
熱に潤んだ瞳と目が合った。
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