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例えば、こんな...
第8章 女子高生と先生と #1
「……いえ」
どう答えたら良いものなのか。
返す言葉が濁った。
桐生先生は気にした様子もなくニッコリ笑顔で首を傾げる。
「頭痛は大丈夫ですか?」
「はい、お陰様で」
桐生先生が戻って来た時にも同じ様な会話をした。帰るよう促されているのは明らかで。

訳分かんねぇ。

「桐生先生」
「何でしょう?」
変わらない穏やかな笑み。
「先生は俺に何か求めてますか?」
正面から見返すとその口角が嬉しそうに引き上げられた。
「えぇ、でもまぁ良いです。お気になさらず」

何だ、それ。
気にしろって言ってるのと同じだろう?

「斎藤先生は早く帰ってお休みになって下さい。寝不足はいけませんよ」

食えない笑顔。
そう思うのは穿(うが)ち過ぎか?
おそらく今は、何を聞いても同じ答えしかもらえない。

「お世話になりました」
釈然としないまま頭を下げる。
「お大事になさって下さい」
柔らかな声に背中を押されて保健室を後にした。

職員用口に向かう途中、白衣を置いてきた事に気が付いて。何となく取りに行くのは気がひける。

……明日で良いか

戻るのを諦め、そのまま家に帰る事にした。
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