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例えば、こんな...
第10章 バカンス
仕上げにチュとリップ音。下唇を吸い上げて、頭を起こす。
「ありがとう、真純。お陰で運転頑張れる」
真っ赤になって俯く真純の隣で、俺は上機嫌で車をスタートさせた。

喜瀬ビーチを抜けたすぐを左に入る。少し走ると左側に見えてくる山吹色の屋根瓦を葺いた白い建物が今日から三泊お世話になるリゾートホテル。
入り口で車を預け、中に入った。
「……素敵」
数歩入って真純が立ち止まる。
二階まで吹き抜けた天井の高い広々としたロビー。柱の少ない開放的な空間。左手前にフロントがあって、正面のテラスは海に向かって開けてる。
テラス手前にあるソファーでチェックインをしてくれるらしい。
なかなか動けずにいる真純の肩を抱いて、そっと奥へと促した。

ウェルカムドリンクにシークヮーサーのジュース。
「美味しい」
そう言って微笑んでいたのに、真純はソファーに落ち着くことなくテラスの端まで歩いて行く。そこからの眺めにため息を吐いたのが見てとれた。
「可愛らしい方ですね」
同じ様にその背を見詰めていたフロントマンが優しい眼差しで微笑んでいた。
少しだけムッとして、そんな自分に苦笑い。
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