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例えば、こんな...
第10章 バカンス
「っひぁん!」
カクンと真純の膝が落ちる。腰から脇に回した腕でその細い体を抱き留めて
「大丈夫?」
低く抑えた声で頭上から囁いた。
真純は俯いたまま小さく首を左右に振る。高まる体温。
甘い、香りがする。
「止める?」
それは質問というより願い。

真純の身体を誰にも見せたくなければ、こんなにも甘く香られて、良からぬ事をしでかさない自信もない。

だから、ね、止めよう?
このまま部屋に戻って、一緒にジェットバスに浸かろうよ。
テラスで見つけて嬉しそうに歓声上げてただろう?

「やっめません」
何を意地になっているのか、真純が姿勢を正して見上げてきた。
「拓真さんと、一緒にプール入りたいです」

真っ赤な顔で、目尻に涙まで溜めて、極めつけに小さく震えながら、何可愛い事言ってんの?
……襲うよ?

「じゃ、入ろ?」
改めて左手を差し出すとおずおずと右手が重なる。キュッと握ってプールサイドまで手を繋いで歩いた。

太陽の光が当たってキラキラと輝く水面。さっき見たときにいた親子連れはもういない。いるのは俺と真純だけ。
並んで座って足を浸した。
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