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例えば、こんな...
第10章 バカンス
「あっ、あのっ、あ、の」
真っ赤な顔が目に浮かぶ。
「何?」
殊更何もなさそうに問い掛けて一歩後ろに下がる。必然的に身体ごと前に引かれ、真純が慌てた様に俺の腕を掴んだ。
「いえ……あ、の、離して……」
「んー?」
頭を起こして念のために後方を確認する。上体を反らして俺から離れようとする真純の手首を掴んで腰を落とした。
「あっ……」
肩まで水に浸かり、両手を首に掛けさせて後ろに歩く。
「大丈夫、力抜いて」
必然的に引き寄せられて顔と顔が近付いた事に頬を更に赤くしながらも、強張った表情で見詰めてくる。
「身体浮かせて楽にして。絶対沈ませないから」
笑んで見せると、不安そうにしながらも小さく頷いた。
しばらく歩いた頃、ふぅと真純の腕から余計な力が抜けた。足が伸びて、流れに任せるように身体が浮上する。両手を脇に添え、時折浮力を助けながらゆっくりプールの中を歩いて回った。
少しずつ慣れて来たのか、真純がゆっくり口元を綻ばせた。
「拓真さん」
「うん?」
「気持ち良いです」
「そう?」
吐息がかかりそうなほど近くにある互いの顔。指先に触れる真純の素肌。
悪戯心が芽を出して……
左手を伸ばして臍の脇をツイと撫でた。
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