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例えば、こんな...
第10章 バカンス
並んだ料理はあらかた食べ終わり、真純が上機嫌に笑ってる。
「タイモの天ぷら、また食べたいです」
何時もよりゆったりとした話し方。ほんのり頬が赤いのも、大きな瞳をキラキラと潤ませて俺を見上げてるのも、全部アルコールが入ったせい。
分かってる。
分かっていても顔がニヤける。
「フーチャンプルーの『フー』も美味しかったです」

『フー』って
何だよソレ

頭の中だけで突っ込んで
「じゃあ車麩買って帰ろうか?」
ニコリと笑むと真純の頬が赤みを増した。黙ったまま俺を見つめ
「くっくるまふ?」
突然慌てたように首を傾げて、瞬きをする。
「『フー』だよ」
「……?」
顔はまだ赤らんだまま真顔になられて、吹き出しそうになった。
「『フーチャンプルー』ってお麩の炒めもの。食べた時にも話したと思うけど?」
「えっえっと、あ、くるまふっていうんですね」
また取り乱して繰り返す。酔ってる真純はイチイチ反応が大きくてそれが俺のツボに入る。
ぎこちない発音の『くるまふ』はどんな字なのかわかってないからに違いない。

ホント、可愛い

思わずクックッと笑いがこぼれた。
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