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例えば、こんな...
第10章 バカンス
「知りませんでした」
「熟してから摘果してたら向こうで売り物にならないからね」
「そうですね」
コクンと頷いて残る一切れを口に運ぶ。自然と綻ぶ頬に見ている俺まで口角が上がる。
「赤い方が甘いから、比べてみて?」
フォークに刺して口元に運ぶと見る間に真純の顔が赤くなった。
「口、開けて?」
「……ぁ、の」
パチパチと瞬きをしてじっと見詰め返してくる。
「あーん」
笑顔で促すと真純の眉が困った様に少し下がった。
「…………」
「誰も見てないよ?」
形の良い唇に軽く果肉でタッチする。小さく震えた真純が観念した様にゆっくり口を開いた。
そっと果実を中に入れ、フォークを引き抜いて。溢れた赤い果汁が唇を濡らす。滴り落ちそうな雫を慌てて舐めた真純の舌の赤さに心臓が跳ねた。

や、べ……

真純をからかおうと仕掛けておきながら、自分が嵌まってどうする。
「どう?」
余裕振って向けた笑み。真純は赤い顔のまま右手で口元を覆い、恥ずかしそうに頷いた。
「あ、甘いです」

……あー喰いてー

「でしょ?」
笑みを深め、赤い果実と不埒な欲を一先ず一緒に飲み込んだ。
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