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例えば、こんな...
第10章 バカンス
黙って見下ろす先で、目蓋が小さく震えた。ゆっくりと持ち上がる長い睫毛。潤んだ瞳が俺を見詰めて。
甘く香る。
唇を湿らせるように僅かに覗いた赤い舌。浅く下唇を噛む仕草にソソラレル。
「な、仲良く、したいです」
ついさっきなぞった記憶と同じ言葉。
ソレが何を意味するのかは、真純の放つ香りと淡く色付いた肌から明らかで。
「……仲良くシたいの?」
余裕ぶって口角を上げて見せても、もうブレーキは効かない。
「したい、です」
「……何、を?」
あえて同じ質問を繰り返した俺に真純がまた、下唇を軽く噛む。きっと考えてる事は俺と同じ。色を撒く瞳。見詰められて腹の底の熱が増す。
形を変えた唇にどうしても触りたくて、我慢出来ずに手を伸ばした。頬に手を添え、親指でそっとその中央に触れる。
「ん……」
軽く下に引いて唇を解放させて。
はぁ、と漏れた吐息が熱い。ゆっくり動いた瞬きに、誘われた。
チュと重ねた唇。
「何、シたいの?」
また尋ねて、でも応えられないように唇を奪う。
「っんん……」
隙間から舌を差し込み、柔らかな舌先を舐めて誘って。絡み合う。
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