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例えば、こんな...
第12章 女子高生と先生と #2
一瞬の間が開いて、扉の向こうから沸き上がった冷やかしの声。その勢いに肩がすくむ。
斎藤先生が扉の向こうに視線を投げ、少し眉をひそめて大きくため息を吐いた。ゆっくりと振り返った困った様な苦笑い。また小さく首を傾げられた。
「ま、気にするな」
伸びてきた大きな手が頭の上でポンポンと跳ねる。反射的に目を閉ざし、肩が上がっていた。
「あぁ、悪い」
すぐに離れた温もり。そのまま隣を通り抜けられてシクリと胸が痛んだ。

嫌じゃ、なかったんだけどな……

謝られてしまった事が寂しい。通り抜けた斎藤先生の背中は私を避けている様で。そんな風に感じてしまった事に苦しくなった……
ジンと目頭が熱くなって、慌てて下を向く。

どうして私、ここに来ちゃったんだろう……

自分の気持ちや行動が理解できなくて、正直どうしたら良いのか分からない。
俯いたまま涙を堪えていると斎藤先生が正面に立っていた。少し広めに取られた距離。決して縮まらないその距離に胸がシクシク痛み出す。
「河合?」
掛けられたのは優しい声。でも、案じてくれるのは私が生徒、だから……
斎藤先生は先生で私は生徒。そんな当たり前な事に心が重く沈むのが分かった。
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