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例えば、こんな...
第12章 女子高生と先生と #2
丁度お湯を注ぎ終えた斎藤先生がポットを台に戻し、私の方へ顔を上げた。同じように私も上を向いて。

あ……

優しい瞳と視線が絡んだ。ただじっと、見つめ合う。
トクントクンと鼓膜を震わす心臓の音。
何も言えずにいると斎藤先生がふうっと目を細めた。
「俺もそうだった」
「……は、い」
咄嗟に言葉が出なくて曖昧な返事になってしまった。でも、斎藤先生は相変わらずの優しい笑みで。
「化学に興味を持った切っ掛け」
話を続けてくれる。
「あ、はい」
「花火の色が変わるの、不思議に思わなかった?」
「思いました」
コクンと頷くと斎藤先生の口角が上がった。頷いたのを喜んでくれているみたいで嬉しくなる。
「炎色反応」
「はい。中学の時実験しました」
「俺も。それまで興味なかったくせに、そっから放課後理科室に入り浸り。たまに授業以上の実験もさせてくれる先生で……今同じ立場になって、すごい先生だったんだと思うよ」
懐かしそうに話す斎藤先生の瞳は穏やかで。その先生との出会いは斎藤先生にとってかけがえのないものなんだろうなあと思った。それが教師を目指す切っ掛けになったのもしれない。
思いを巡らす私に斎藤先生の笑みが深まった。
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