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例えば、こんな...
第12章 女子高生と先生と #2
トクントクンと心臓の音が鼓膜に響いてる。

……どうしよう

さっきとは違う意味で言葉に詰まる。

すごく……嬉しい……

「河合はもっと日本語を学びたいと思わないの?」
日本語を学びたい……それはストンと私の心に収まって。まるで最初から願っていたみたいに落ち着いた。
「……思います」
口にすると益々そんな気がしてくるから不思議。
頷いた私に斎藤先生が笑うように目を細めた。
「それで、充分だと思うよ」
「……充分、ですか?」
「そう。大学に進学したい理由」
「……」
「俺が理工学部選んだ理由もそうだったしね」
将来を見据えて学部を選ばなくちゃいけないと思ってた。
でも、足りないから、学びたいから大学に行く。さっき先生が話してくれたその事が、改めて自分の事として身に染みてきた。

それで、良いんだ……

「何となくじゃなく、学びたいモノがあって大学を目指せる方が頑張れるだろ?」
「はい」
ふっと笑って斎藤先生はマグカップを手に取った。ゆっくりと味わうようにコーヒーを飲んでテーブルに戻す。
「河合はちゃんと、学びたい事を考えられてるよ」
認めてくれる優しい言葉が嬉しくて。
「はい」
私は斎藤先生の目を見て頷いていた。
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