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例えば、こんな...
第12章 女子高生と先生と #2
「前もね、大丈夫だったの」
「前?」
千佳ちゃんに保健室まで連れて行ってもらったけど、あの後入院したのもあって斎藤先生に助けてもらった話はしていなかった。信号が青に変わったのか自転車をこぎ始めた千佳ちゃんにかい摘まんでその時の事を説明する。
「……ふーん」
少し低くなった声。
そこから家に着くまで、千佳ちゃんは一言も話さなかった。

「ありがとう」
自転車を降りて千佳ちゃんを見上げる。
「千佳ちゃん」
「ねぇ真純」
被るように話し掛けられ、どうしたのかと聞こうと思っていた言葉を飲み込んだ。
「真純は斎藤先生が好きなの?」
「えっ?」
思いもよらない質問に、驚いて動きが止まる。
「好、き?……ううん。どうして?」
そんな風に考えもしなかった。左右に首を振って見上げると千佳ちゃんは少し眉を下げ、ゆっくり口角を上げた。
「真純が大丈夫だったの、珍しいなぁと思っただけ」
「う、ん……」
珍しいも何も初めてで、自分でもよく分からない。
戸惑いがちに頷くと千佳ちゃんがポンポンと私の頭を撫でてくれた。
「大丈夫。そのうちみんな平気になるよ。斎藤先生はその始まり、って事だよ」
「……うん」
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