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例えば、こんな...
第3章 御礼
絶対的な力の差。人好きのする爽やかな笑顔の裏に隠された、色の欲。
どっちも知りたくなんて、なかった。
たまたま校内放送で呼び出され、壁ぎわに追い詰められただけで済んだけど、もしあの時保護者の方が私を訪ねて来なかったら……
そう思う事さえ恐ろしい。
今も黒田先生の声を聞くと身体が竦む。
いなくなってくれるのは、申し訳ないけど正直嬉しい。

……これって、拓真くんのお陰なのかな?
『知らない振りは出来ません』と怒る彼に『頼んで下さい』と言い募られて、お願いしてしまったのだけど……

あの時、鍵がかかっていて本当に良かった。
ドアがガンッと音を立てる度に、身体が震えた。物凄く怖かった。
拓真くんがいてくれて、良かった。キュッて優しく抱き締めてくれた暖かさにホッとした。

今日、会ったら聞いてみようかな……

そんな事を思っている間にマンションへ着いていた。
駐車場に車を……止めて。
エントランスへ向かう足取りが軽い。
オートロックをパスワードで通り抜け、郵便受けの確認もそこそこにエレベーターに飛び乗った。
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