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例えば、こんな...
第3章 御礼
ギュッと私を強く抱き締めて、拓真くんが腕を解いた。足元に置いた答案用紙の入った紙袋を持ってくれる。
「おっも!」
驚いた顔をして
「こんなに採点するんですか?」
聞きながら中に運んでくれた。
「ありがとう。急いでたから採点済みのも、一緒に持って帰って来ちゃったの」
テーブルの脇を示してそこに下ろしてもらう。
「……そんなに急いで帰って来たんですか?」
前屈みになった身体を起こしながら拓真くんが私を振り返った。上目遣いだった視線が拓真くんの方が高くなって、見下ろされる。
「う、うん」
なぜかドキッとして一歩下がった。
ふふっと笑う拓真くん。
「真純ちゃんも、早く俺に逢いたかったんですか?」
「……っ」

そう、だけど……

逃げる間もなく、また腕の中に囲まれてしまった。
「真純ちゃんも俺と、早く逢いたかったんですね?」
微妙に言い回しを変えてニコリと笑う。じっと見つめられて顔が熱い。辛うじて頷いた所を抱き締められた。
「超嬉しいんですけど」
キューッと腕に力がこもる。
「真純ちゃん、可愛い……」
無意識に気持ちを吐露していた事に気が付いた。恥ずかしくて頭を上げられない。
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