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暁闇
第8章 好意と好きと
「……さっきの話の、好きな人。
まだ引きずってるんすか?」
「ん?」
顔を上げ、丈を見て。
「もう終わったことだよ」
「でも――――」
少し真面目な表情をして。
言葉を選びながら口にしているのか、なんだかたどたどしい口調で聞いてくる。
「そんなに好きだった人……どうやったら忘れ……っていうか、終わり? にできるんすか?」
丈にとっては、本当に素朴な疑問、なのだろう。
それはただ興味本位で聞いている感じではなくて。茶化して答えるのは、なんだか俺も気が引けた。
「……まあ、本当の意味で忘れるなんて、たぶん無理だろうな」
あれをなかったことになんて――――きっと、何年経ったとしてもできない。
「それでも、だんだん思い出す回数は確実に減ってきて――……」
そう……考えてみたら。
前は、毎日のように桜井のことを考えていたはずなのに。
いつしかそれは、2日に一度、3日に一度……そんなふうに、だんだん。
何故、だろう――――。