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暁闇
第8章 好意と好きと
「……オレね」
ごそごそと、動く気配がして。
さっきよりも丈の声がよく聞こえるようになった。
こっちを向いたのかもしれない。
「姉ちゃんには幸せになってほしいんだ」
「……丈」
「姉ちゃんさ、なんかいっつもオレの心配ばっかしてんじゃん。でもオレは、そんな姉ちゃんの方がずっと心配で。
だって、ほんと男っ気なくてさ。仕事と家事とオレの世話ばっかの毎日。
もっと遊んだら? って言っても、そうだね、って笑うだけでさ」
はあ……と、溜め息をつく。
「姉ちゃん、顔だって悪くないし、性格も穏やかだしさ。もてると思うんだよね。
でも、告られても断ってるみたいで」
「……そうなんだ」
「だから!」
その声と共に、勢いよく起き上がった気配。
「……翔悟さんを家に連れてきたとき、とうとう彼氏が!? って期待したのに……」
はああ……と、また大きく息を吐く。
「……まあ、オレも翔悟さんと仲良くなれたし、それはそれでいいんだけどさ」
そしてそう、呟くように言って。
そのまま、あとは黙り込む。