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ワンダー*ワールド
第1章 〈15年前〉 吉澤 桃子、24歳。



「お願いします!桃子(ももこ)さんと…、
結婚させてください!」

熱が篭り、騒々しい部屋で必死に頭を下げる。

(千里くん…)

ちらりと隣を見れば、真剣な顔で額を床につける彼。
ゴクリと息を飲んだ。

こんなにも真剣に思ってくれている。

「…お願いします。私、千里(せんり)くんと、“この子”と、家族になりたい…!
お願いします! お父さん、お母さん、おばさん、おじさん…! お願いします!」

彼の覚悟を無駄にしないためにも、私は体を張って頼み込む。


「千里! あんた何言ってるか分かってるの!?」


おばさん…千里くんのお母さんが、怒っているような悲しんでいるような、そんな声で怒鳴り上げる。
私はきゅっと下唇を噛んだ。胸がピリッと痛む。

おばさんは、怒っていると同時に悲しんでいる。
千里くんは優秀でいい子の鏡だったから、
失望よりも悲しさのほうが大きいんだろう。

あんなにも大好きだったおばさんを、私は傷つけてしまった。



「…っ、あんたはまだ、17でしょ!?」



彼、夏木 千里くんはお隣の家の長男。
お隣同士で昔から交流もあり、私は千里くんの出生も見届けている、
所謂“幼馴染”だ。

彼は今17歳の高校生であり、

このお腹の子の父親でもある。



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