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ワンダー*ワールド
第1章 〈15年前〉 吉澤 桃子、24歳。


「…そんなことはわかってる」

「わかってない!」

「っ、でも!…オレ、桃子さんとずっと一緒にいるって約束したんだ!
許してくれないんだったら家を出てもいい! それでも、桃子さんだけは譲れない…っ」

「…!」

睨むようにおばさんとおじさんを見上げる千里くん。

心臓が高鳴った。


ずっと平凡に暮らすものだと思っていた。
ずっとお母さんやお父さん、周りの人に迷惑かけずに過ごしていくのかと思ってた。

でもその反面、そんな生活に退屈していたのかもしれない。

千里くんに告白された時…
今まではお隣の家の長男で、弟みたいに思っていたのに、
いつの間にか大きくかっこよくなっていることに気づいて。

千里くんが、退屈な生活から私を救ってくれた。
私とずっと一緒にいるって約束してくれた。

私より若いのに、なんて頼もしいんだろう。


だから、この子が出来たとき…私は正直に嬉しかった。

千里くんとの愛の結晶。

嬉しくて堪らなくて、これで本当にずっと一緒にいられる…
そう…そう、思ったんだ。




「───願いします…!」


ポタ…ポタ…

床を濡らしながら、喉から絞り出したような声で懇願する。


「認めて、許してください…っ!私に…この子を、…産ませて…」

「…桃子ちゃん…」


思ったから、どうしても、この子だけは譲れないんだ。




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