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悪戯な思春期
第2章 重ねた王子様は微笑んで

 しばらく雅樹に抱きしめられた後、私たちはベッドに腰掛けた。
 先ほどまでの空気の揺れはない。
 穏やかな気持ちで雅樹にもたれかかる。
「私ね、瑠衣しか見てなかったの」
 ポツリと話し出す私を、彼は静かに見守る。
 そんな態度に促され、私は告白を始める。
「瑠衣さえいればいいって。瑠衣の映る画面、瑠衣の声が流れるCD。それがあれば良かった。だから、恋もしなかったし、経験もなにもないの」
(なに言ってんだろ)
「当然、キスも……その先も」
 それ以上言えなくなってしまった。
(こんな彼女でいいの? 後悔しない? 瑠衣をいつも追いかけてるんだよ?)
「椎名は、それでいい」
 呆気ない返事だった。
「それでいいんだ」
(理由は?)
 雅樹は微笑んで頭を撫でた。瑠衣みたいに。
「それがいいんだ」
 何だか怪しい意味を帯びてきた気がするが、私も微笑み返した。
 全てを許された気がした。
(それでいいんだって)
(聞いてたよ……)

 ふと時計を見ると七時を回っていた。
 焦って雅樹に示すと、彼はやはり余裕ある笑みを浮かべた。
「門限なんてある歳じゃないよ。でも、帰って欲しいなら帰るけど」
 返事に困る。
「……冗談。帰るよ」
 少しトーンの落ちた声でそう言うので、私は立ち上がり彼を引き留めてしまう。
 掴まれた腕を見て、低く囁く。
「ベッドのそばでされると、自制できないんだけど」
 パッと離した私の頭を撫でる。
 さっさと玄関に向かう彼を、ただフラフラ追うことしか出来ない自分を呪った。
 靴に足を入れ、前屈みになっている雅樹に近づく。
 背骨が浮き出た後ろ姿は、アイドルなんかより色気がある。
 履き終えて立った彼が此方を振り返る。
「じゃあ、明日ね」
「あ、うん」
 まるで女子友達みたいなアッサリした挨拶に拍子抜けする。
 ドアを開ける音が木霊する。
 もうすぐいなくなってしまう彼にすがりつきたくなる。
「椎名」
 半分ドアに隠れた雅樹が呼びかけた。
「次は遠慮しないよ。忘れないで」
 ドアが閉まる音。
 同時に私が崩れ落ちた音が重なる。
(なにを……遠慮)
(次は奪われてしまいますねー)
(キスの先ってこと?)
 好き勝手に喋る自分に反論もせずに、私はドアを見つめた。
 雅樹の残像を探すように。
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