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天使の恋 〜凛花〜
第1章 はじまり
だから次の日、彼が指名で来店した時は心底びっくりした。

今日は冬らしいボルドーのチェックのシャツに、チャコールのダウンベスト姿。黒縁の眼鏡をかけてて、昨日より年相応の印象を受けた。

一緒に来た翔ちゃんが、おどけたように「よっ」というポーズをする。

他のコたちの羨望と嫉妬に混ざった視線を浴びながら、席に着く。

少し距離を取って、彼のほうに斜めに膝を向けて座る。
どうしよう、私としたことが会話を始められない。

少しの沈黙のあと、
「なんか飲んだら?」
と拓也くんに促される。

「…ありがとう」
彼に合わせてビールを頼んで乾杯する。

まだ私が会話に困っていると、
「りんかって本名?」
と突然聞かれる。

えっ、早速?

キャバ嬢に本名を聞いてくるお客さんは、概してめんどくさい人が多い。
疑似恋愛の世界で、わざわざ源氏名を使ってる意味を理解せず、プライベートに入り込んでこようとする。
だいたいこういう時は適当に流すに限る。

「うん、そうだよー」と軽く笑いながら言うと、
「どーゆー漢字?由来は?」と真顔で聞かれてしまった。

その目があまりにまっすぐだったから、なんだか申し訳なくなって、これ以上嘘はつけなくなってしまった。

「初めて働いたお店のママがね、付けてくれたの。色々ある世の中だけど、あなたはあなたらしく、"凛"としてなさいって。
凛と咲く一輪の花でありなさいって。
心が折れたり流されそうになったりする時は、ママの言ったことを思い出すようにしてる。
だから、本名って言うのは嘘。でも、本名は教えないよ」

そこまで一気にまくしたてると、目の前のビールをぐっと飲んで、彼の顔をちらりと見る。

目が合うと彼は、
「いい名前だね」
と言って、くくっと笑った。

笑うと片方の目尻にちょっと皺ができて、いたずらっ子っぽい。そしてよく見るとけっこうかっこいい。

その後は途切れ途切れの当たり障りのない会話が続いた。

ナンバー失格だ。

なんだか彼に見つめられると、上っ面な会話とか、全部見透かされる気がして。

今日は手を繋がれることも、口説かれることすらなかった。

「次はいつ出勤?」
帰り際に聞かれる。
「来週の金曜日。平日は昼の仕事あるから」
「また来るよ」

何ひとつ気の利いた会話はできなかったのに。

でもなんだか、彼は嘘をつかないような気がした。
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