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天使の恋 〜凛花〜
第2章 ざわめき
宣言どおり、拓也はほぼ毎週末やって来た。

お店が暇な時は待機の女の子全員にドリンクを頼んでくれたり、
ノルマの日に来れないと、代わりに部下を寄越してくれた。

私もやっと話すのに慣れてきて、彼のいろんな話を、少しずつ聞き出すことができていた。

お触りも、店外の誘いもない。

いわゆる「超」がつく良客。

だからって、簡単に好きになるほど私は素人じゃなかった。

むしろこういうお客さんこそお客さんとして大事にしなきゃ。

そう思ってたはずなのに。

会うごとに少しずつわかってきた彼のこと。

仕事に対してはほんとに熱くて、圧倒的なリーダーシップがある人。
お酒はそんなに強くなくて、飲むとすぐ寝てしまう人。

お母さんを小さい時に亡くした人。

理由は言わないけど、きっと彼の何かが原因で、奥さんに逃げられた人。

気づけば、もっと知りたい、私のことも知ってほしい、と思うようになっていた。



出会って3ヶ月、私から、初めてアフターに誘った。

私ももともとお酒は弱い。
店では気を張って酔っ払わないようにしてるけど、ちょっとだけ飲みすぎて、子供の頃の話とか、昼の仕事の夢とか、そんなことをたくさん語ってしまった。

「ごめん、聞きたくなかったよねこんな話」
お店を出る間際そう言うと、
「いや?そーゆーとこ、普段からもっと出せばいいのに」
と涼しげに返される。

「だって、私の話より、お客さんの話聞いてあげた方がいいと思うし」

「そう?俺はもっと知りたいけど」

お店の階段を先に降りていた拓也が振り返り、ふっと笑う。

その表情が色っぽすぎて、一瞬たじろくと、動揺したのか、足を踏み外してよろけてしまった。

とっさに拓也が手を握って支えてくれる。

「…ありがと」
「…」

指が絡められる。
ふたりの目が合う。

何かを期待したその瞬間、手がぱっと離された。

そして、前を歩き出した拓也は、
「もっと自分出せば?男ってそーゆーもんだよ。その方がもっと客掴めるよ」
と穏やかに言う。

…そうだよな。

「俺だけのもの」なんていうお客さんは困り者だけど、そこまで割り切られるのもな…。

彼にとって私はキャバクラのキャスト。

指名してくれるのは店の中で一番いいと思っただけで、それ以上でもそれ以下でもないのだろう。

彼が呼んでくれたタクシーに乗って、別々に家路に着いた。
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