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【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)


 ねぇ、サクラ……。

 あたしはあなたがハジメテだけど……、


 あなたはどうなの?

 過去を詮索したくなくても、現在(いま)が気になるの。


 サクラ、今のあなたは、いつも通り香水の匂いがしない。


 それなのに、どうして浴室で噎せ返るような香水の匂いがしてたの?

 部屋に充満するほど、どうして服に染み付いていたの?

 どうすれば夜更けから明け方までに、あれだけの匂いを持ち帰られるの?


 最後まで繋がることを拒み、名前を呼ばなかったことに対して、サクラへの猜疑心が芽生える。


 最初は、サクラのことなど詮索しても無意味だと思った。

 いずれ別れる間柄だからと。

 モモちゃんだとわかっても、懐かしむ心はあれど、ここまでの独占欲はなかった。

 だけどこうして、サクラを渇望してしまった今なら、サクラの謎は、見過ごすことが出来ない心の疵となる。


 見ぬふりをしようと押し込めていた感情が押し寄せて、苦しいんだ。


 アノニオイハ……。


――ちょっとこれから人に会わねばならないので、出かけてきます。


 あたしを寄せ付けないためだけの嘘だと思っていたけれど、あなたは本当にどこかに行こうとしていたの?


 アレハ、オカアサマノニオイダッタ。


 だから、繋がりたくないと拒んだの?



 繋がれずとも心地よいこの身体の中で、繋がれないことに心が泣いた。


 サクラの心が欲しい。

 あたしに向いて欲しい。


 この心はまるで――。


 いや、きっとそうなんだ。


 だからサクラのことになれば、あたしは我を見失う。

 姫という立場を忘れて、いやらしい女の姿みせつけても、サクラを求めるんだ。



 ああ――。


 あたしは……サクラが好きだ。

 昔がどうのではなく、今のサクラに惹かれていたんだ。


 限定的なこの共同生活を、あらかじめ宣言していたそのひとを。

 他に繋がるひとがいるそのひとを。


 あたしは……、あなたにとってただの姫から抜けきれないの?
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