この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
【SS】目が覚めたら…?
第28章 【ファン感謝】白雪姫 ③王子(モモ)
ねぇ、サクラ……。
あたしはあなたがハジメテだけど……、
あなたはどうなの?
過去を詮索したくなくても、現在(いま)が気になるの。
サクラ、今のあなたは、いつも通り香水の匂いがしない。
それなのに、どうして浴室で噎せ返るような香水の匂いがしてたの?
部屋に充満するほど、どうして服に染み付いていたの?
どうすれば夜更けから明け方までに、あれだけの匂いを持ち帰られるの?
最後まで繋がることを拒み、名前を呼ばなかったことに対して、サクラへの猜疑心が芽生える。
最初は、サクラのことなど詮索しても無意味だと思った。
いずれ別れる間柄だからと。
モモちゃんだとわかっても、懐かしむ心はあれど、ここまでの独占欲はなかった。
だけどこうして、サクラを渇望してしまった今なら、サクラの謎は、見過ごすことが出来ない心の疵となる。
見ぬふりをしようと押し込めていた感情が押し寄せて、苦しいんだ。
アノニオイハ……。
――ちょっとこれから人に会わねばならないので、出かけてきます。
あたしを寄せ付けないためだけの嘘だと思っていたけれど、あなたは本当にどこかに行こうとしていたの?
アレハ、オカアサマノニオイダッタ。
だから、繋がりたくないと拒んだの?
繋がれずとも心地よいこの身体の中で、繋がれないことに心が泣いた。
サクラの心が欲しい。
あたしに向いて欲しい。
この心はまるで――。
いや、きっとそうなんだ。
だからサクラのことになれば、あたしは我を見失う。
姫という立場を忘れて、いやらしい女の姿みせつけても、サクラを求めるんだ。
ああ――。
あたしは……サクラが好きだ。
昔がどうのではなく、今のサクラに惹かれていたんだ。
限定的なこの共同生活を、あらかじめ宣言していたそのひとを。
他に繋がるひとがいるそのひとを。
あたしは……、あなたにとってただの姫から抜けきれないの?