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天使の恋 〜桃〜
第3章 嘘
「来週の日曜日ね、桃、バースデーなの」

桃ちゃんがいつもの得意の上目遣いで話しかける。
この店に来始めてから3ヶ月、もうすぐ春が来る。

「そーなの?今年何回目のバースデー?」

とからかってみると、

「違うよぅほんとの誕生日!免許証見る!?」

とふくれっ面になる。

桃ちゃんの怒る顔はけっこう好きだなと思う。
ふだんどんな表情をしていてもかわいく見えるように計算し尽くしているけど、本人は気付いているのかいないのか、怒った顔はちょっと崩れてて、それがイイ。

「あははは冗談だよ。おめでとう。でもなー日曜日はちょっと来れそうにないなぁ」

「だよね…」
今度は寂しそうな顔をする。
これは、得意の男を落とす顔だ。
それにしても本当に表情がくるくる変わって、見ていて飽きない。

「その次の週の平日に、盛大にお祝いするよ」
「うん…」

普通なら「ホント?嬉しい!」とぱっと明るくなる表情が、今日は晴れない。

「ねぇ翔ちゃん…大人になるってどんな気持ちだろ」
目を伏せたまま聞く、その表情に今度はどきりとする。

時々見せるこの顔は、きっと演技ではない。

最初に会った時から、この小さな子が、何か大きなものを背負っているということは想像がついた。

それが何なのかを彼女は絶対言わなかったし、知っても俺ができることなんて別にないと思っていた。

ただ、その本音と演技の入り混じったいろんな表情を、もっと見てみたいな、と思った。

ここに来る理由はそれだけ。

それだけのはずだった。







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