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天使の恋 〜桃〜
第3章 嘘
まだ他の奴らは店で飲んでいたけれど、煙草を切らせてしまって、ついでになんだか外気に触れたくなって、
「えー寂しいー!」
という桃ちゃんの声を背に外に出る。
大人になるってどんな気分だ?
大人って何だ?
角の自販機の前で、店長が煙草を吸っていた。
俺を見つけると、軽く会釈する。
「客引きは条例違反すよ」
自販機で煙草を買って、隣に立つ。
「いえ、立ってるだけですから」
「じゃあサボりで罰金すね」
「困りましたねぇ」
彼の渋さや、水商売に似合わない丁寧な物腰は、なかなかかっこいいなと思う。
「桃ちゃん、誕生日なんすね」
「はい、盛大にやりますんで、よろしければ」
「日曜なんで、次の週にでも改めて祝いに来ます」
「翔平さん」
店長が2本目の煙草に火をつけながら言う。
「結婚してるっていうの、嘘でしょう?」
「え、なんで…」
聞き返すのが精一杯だった。
「まぁ、この街でやってきて、俺ももう長いですから」
焦りを隠す俺とは対照的に、店長は平然と、理由になっているようななっていないようなことを答えた。
そして、
「だからといって、うちの商売道具に手を出していいわけじゃないですけどね」
と続けた。
「商売道具って…」
「桃は、あいつが16の時、行く当てもなかった時に、俺が拾ったんです」
「水商売が必ずしも幸せな職業とは思わない。でも、あいつにとって今までなかった居場所を作ったことは自負している。晴れて成人だ。今年中には、銀座か六本木に出してやりたいと思ってる」
銀座?六本木?
何も言わない俺に、店長はたたみかける。
「それが、あいつが唯一男に頼らずやっていける方法なんですよ」
頭がこんがらがる。
いや、話の内容より、動揺している自分に混乱している。
指名嬢の出世じゃないか。
喜んでやれ、自分。
「だから、今ここであいつの気持ちを惑わすのはやめていただきたい。ああ見えても繊細なんだ」
そんなこと、俺だって知ってる。
繊細なフリをする、計算高さの中に、見え隠れする本当の繊細さ。
「お客様にこんなことを言うのは本意じゃないが、遊びならーー」
ドン。
本当に無意識だった。
気づけば店長を、壁に押し付けていた。
「…遊びじゃなきゃ、いいんですか?」
「えー寂しいー!」
という桃ちゃんの声を背に外に出る。
大人になるってどんな気分だ?
大人って何だ?
角の自販機の前で、店長が煙草を吸っていた。
俺を見つけると、軽く会釈する。
「客引きは条例違反すよ」
自販機で煙草を買って、隣に立つ。
「いえ、立ってるだけですから」
「じゃあサボりで罰金すね」
「困りましたねぇ」
彼の渋さや、水商売に似合わない丁寧な物腰は、なかなかかっこいいなと思う。
「桃ちゃん、誕生日なんすね」
「はい、盛大にやりますんで、よろしければ」
「日曜なんで、次の週にでも改めて祝いに来ます」
「翔平さん」
店長が2本目の煙草に火をつけながら言う。
「結婚してるっていうの、嘘でしょう?」
「え、なんで…」
聞き返すのが精一杯だった。
「まぁ、この街でやってきて、俺ももう長いですから」
焦りを隠す俺とは対照的に、店長は平然と、理由になっているようななっていないようなことを答えた。
そして、
「だからといって、うちの商売道具に手を出していいわけじゃないですけどね」
と続けた。
「商売道具って…」
「桃は、あいつが16の時、行く当てもなかった時に、俺が拾ったんです」
「水商売が必ずしも幸せな職業とは思わない。でも、あいつにとって今までなかった居場所を作ったことは自負している。晴れて成人だ。今年中には、銀座か六本木に出してやりたいと思ってる」
銀座?六本木?
何も言わない俺に、店長はたたみかける。
「それが、あいつが唯一男に頼らずやっていける方法なんですよ」
頭がこんがらがる。
いや、話の内容より、動揺している自分に混乱している。
指名嬢の出世じゃないか。
喜んでやれ、自分。
「だから、今ここであいつの気持ちを惑わすのはやめていただきたい。ああ見えても繊細なんだ」
そんなこと、俺だって知ってる。
繊細なフリをする、計算高さの中に、見え隠れする本当の繊細さ。
「お客様にこんなことを言うのは本意じゃないが、遊びならーー」
ドン。
本当に無意識だった。
気づけば店長を、壁に押し付けていた。
「…遊びじゃなきゃ、いいんですか?」

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