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可奈さん
第4章 傘
彼女は今日も待ちぼうけなんだろうか。
電車を乗り換えてから2駅。可奈さんの職場は俺が学生の時によく遊びに出掛けていた街にあるらしい。久しぶりに行ってみるのも悪くない、などと一瞬考えてみたりする。
雨は本降りに変わり、俺は慌てて7号棟に駆け込んでそのまま階段を上った。
マンションのバルコニーに人影がないのを確かめてから通りに目を向けると、そこに見覚えのある車が停車していた。
「あいつ…」
俺は踊り場から下を覗き、なかなか姿を現さない男をじっと待った。
今頃なんだよ…
「…ん?」
運転席のドアが開き、傘をさした運転手が後部座席のドア付近で立ち止まった。
マンションのエントランスから出てきた人物を迎える様子でドアに手を掛ける。
そこに向かってまっすぐ移動していく花柄の傘。その主は黒のヒールを履いていた。
可奈さん?
俺は身を乗りだしてその傘を目で追った。
電車を乗り換えてから2駅。可奈さんの職場は俺が学生の時によく遊びに出掛けていた街にあるらしい。久しぶりに行ってみるのも悪くない、などと一瞬考えてみたりする。
雨は本降りに変わり、俺は慌てて7号棟に駆け込んでそのまま階段を上った。
マンションのバルコニーに人影がないのを確かめてから通りに目を向けると、そこに見覚えのある車が停車していた。
「あいつ…」
俺は踊り場から下を覗き、なかなか姿を現さない男をじっと待った。
今頃なんだよ…
「…ん?」
運転席のドアが開き、傘をさした運転手が後部座席のドア付近で立ち止まった。
マンションのエントランスから出てきた人物を迎える様子でドアに手を掛ける。
そこに向かってまっすぐ移動していく花柄の傘。その主は黒のヒールを履いていた。
可奈さん?
俺は身を乗りだしてその傘を目で追った。