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可奈さん
第4章 傘
「拓也、そんなに何度も鳴らさなくても聴こえてるわよ」
俺はドアを開けたばあちゃんに買い物袋を押し付けた。「ちょっとこれ貸して、あとで返すから」と言い残し、逆さに吊るされてあった傘を持って階段を駆け下りた。
団地を飛び出して歩道を走り、点滅しだした青信号を見ながら横断歩道をバシャバシャと駆け抜ける。
レンガ色のマンションを正面から見上げ、息を整えてから左に歩きだすと、歩道の端に座り込んだ可奈さんがいた。
正面玄関の前を通り過ぎ、ゆっくりと可奈さんに近寄る。
涼しそうな水色のワンピースは濡れて地面に張り付き、腰の後ろで結ばれた細いリボンは蝶の形をしていなかった。
髪からポタポタと落ちる雫が肩やうなじに流れ、着衣にそのまま染み込んでいく。
通り過ぎる車のテールランプを無意味に見送っている小さな背中。布からはみ出して折り畳まれている白い膝。細い足首から先は何も履いていなかった。
俺はドアを開けたばあちゃんに買い物袋を押し付けた。「ちょっとこれ貸して、あとで返すから」と言い残し、逆さに吊るされてあった傘を持って階段を駆け下りた。
団地を飛び出して歩道を走り、点滅しだした青信号を見ながら横断歩道をバシャバシャと駆け抜ける。
レンガ色のマンションを正面から見上げ、息を整えてから左に歩きだすと、歩道の端に座り込んだ可奈さんがいた。
正面玄関の前を通り過ぎ、ゆっくりと可奈さんに近寄る。
涼しそうな水色のワンピースは濡れて地面に張り付き、腰の後ろで結ばれた細いリボンは蝶の形をしていなかった。
髪からポタポタと落ちる雫が肩やうなじに流れ、着衣にそのまま染み込んでいく。
通り過ぎる車のテールランプを無意味に見送っている小さな背中。布からはみ出して折り畳まれている白い膝。細い足首から先は何も履いていなかった。