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可奈さん
第4章 傘
彼女は泣いてはいなかった。いや、雨でよくわからなかった。
「井口…拓也さん…、ピザ屋さん……、あぁ…」
少し頷いて、差しかけられている傘を見回した。
「…綺麗な傘…蛇の目傘?…初めて間近で見たわ」
俺も貴女を初めて間近で見ました。
細い眉、はっきりとした二重に茶色がかった瞳、たかくない鼻、ふっくらした小さな唇。
朱色のせいで頬に赤みがさして見える。それでも視線は泳いでいた。
「あの、立てますか?」
「えっ、あ、…ごめんなさい私ったら…こんなところで転んじゃうなんて、恥ずかしいわ、ふふっ…」
可奈さんは見事な嘘と笑顔を俺にくれた。そして差し伸べた手を借りずに一人で立ち上がった。
足元に落ちている怪しい茶封筒。びしょ濡れになったそれを拾い上げると彼女が横からサッと奪う。
「ありがとう、ごめんなさい」
それは間違いなく札束で膨らんでいて、その証拠に開いた封から万札がチラッと見えた。
「井口…拓也さん…、ピザ屋さん……、あぁ…」
少し頷いて、差しかけられている傘を見回した。
「…綺麗な傘…蛇の目傘?…初めて間近で見たわ」
俺も貴女を初めて間近で見ました。
細い眉、はっきりとした二重に茶色がかった瞳、たかくない鼻、ふっくらした小さな唇。
朱色のせいで頬に赤みがさして見える。それでも視線は泳いでいた。
「あの、立てますか?」
「えっ、あ、…ごめんなさい私ったら…こんなところで転んじゃうなんて、恥ずかしいわ、ふふっ…」
可奈さんは見事な嘘と笑顔を俺にくれた。そして差し伸べた手を借りずに一人で立ち上がった。
足元に落ちている怪しい茶封筒。びしょ濡れになったそれを拾い上げると彼女が横からサッと奪う。
「ありがとう、ごめんなさい」
それは間違いなく札束で膨らんでいて、その証拠に開いた封から万札がチラッと見えた。