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可奈さん
第4章 傘
エレベーターが3階に着くまでの間に頭をフルに回転させた。

ヒールの女は本妻で、手切れ金を渡しに来たんだ。浮気が発覚したからアイツはここに来られなくなっていた。何も知らない可奈さんをずっと待たせやがって。おまけに自分だけ引っ込んで女にケツを拭いて貰うなんて最悪な野郎じゃねぇか。

ドラマみたいな不倫劇のお決まりの結末を目の前で見せられ、ほんとにあるんだなぁと感心する。

いや、ムカつく。

金で解決しやがって!
可奈さんの時間を返せ!
お前なんかに引っ掛からなかったらさっきみたいな惨めな思いをしなくてすんだんだ!

エロおやじ、やっぱアンタはやなやつだった。
もう二度と可奈さんの前に顔を出すな、俺が許さない。
今度会ったら1発ぶっ飛ばして…


「着いたわ」

「はい…」


ヒタヒタと落ちる水滴を引きずってドアに近づくと、踵の高いミュールとかいうやつが右と左に転がっていた。



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