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可奈さん
第4章 傘
「ところで前に駅で会った彼女とはどう?」

「終わった」

「また?…アンタって長く続いたためしがないわね…」

「ま、浮気者だからしょうがないさ、血筋かもな」

「…そういう所、ホント子供だわ…」

「うるせ」

「とにかく婆ちゃんちにばかり行かないで実家に…」

「あ、電車が来た、もう切るよ、姉ちゃん、ご懐妊おめでとう」

「ちょっとタ…」


面倒な電話はこうやって切るに限る。

可奈さんはたぶん、姉貴より年上だと思う。妊娠して幸せな今日の姉貴と、最悪な今日の可奈さん。
夢から覚めたあとの現実に打ちひしがれていながら、突然現れた俺に笑顔をくれた健気な女性。



静かになった雨の音に傘を畳むと、相合い傘の高校生が楽しそうに団地の敷地から出て行った。


相合い傘…

可奈さんと同じ傘の中
エヘッ…


バスタオルを握り、また会う口実を作った自分にグィッと親指を立てた。



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